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2025-08-09
#雑記

現代人とドーパミン

高い緊張感の中で働き続ける日々の中、朝から夕方まで張りつめて走り切り、夜は倒れ込むように眠る。

そんな状態が続くと、休日にふっと糸が切れたように力が抜け、何をするにも体が重く感じる。予定表にはやるべきことが並んでいる。けれど、そこに手を伸ばす前の一呼吸がやたらと長い。視界の彩度が少し落ちて、音の輪郭が曖昧になるようなあの感じだ。僕はそれを、過去の偉大な小説家たちの言葉を借りて、心が乾くと呼んでいる。


その背景には、ドーパミンの使い過ぎがあるというのが僕の仮説だ。日々の仕事を高い緊張感でこなす中で、必要性に駆られた脳ではドーパミンの分泌が進むが、休みの日にはむしろ反動の谷が来る。僕の体感では、この谷が深いときほど何を見ても心が動かなくなる。

美しいものが美しく見えない日

美しい景色を見ても感動が湧かない。好きな食事メニューでも箸が進まない。映画や本に意識が入っていかない。唯一、仕事だけが再び僕をフロー状態へ連れ戻すのだ。 土日も仕事を続ければ、もう一度スイッチは入る。けれど、1か月もそうやって自分を前へ押し続けて走り続けると、次の休みでさらに大きな脱力に襲われる。集中力を前借りした利子が、静かに膨らんでいたことに、そのとき気づくのだ。

ジムで見つけた小さな転機

この谷の最中、僕はジムへ向かう。 何も考えずにバーを担ぎ、膝と股関節を畳み、静かに立ち上がる。スクワットを5レップほど繰り返すと、全身の血の巡りが変わり、視界の縁が少し明るくなる。帰宅する頃には気持ちも上向き、止まっていた手がまた動きだす。

テストステロン氏の有名な言葉「筋肉がすべてを解決する」という表現は大げさに見える。けれど、僕の実感に近い部分がたしかにある。

体から心へ。逆向きの合図

科学的な厳密さを主張するつもりはない。ただ、いくつかの仮説は立てられる。大筋群を動かすことで交感神経が適度に働く。そして姿勢が立ち直り、呼吸が深くなる。 脳内ではテストステロンの動きがドーパミン回路に良い影響を与え、やる気と闘志が戻る。体から心へ指示を出し直すという順序の反転が起きる。

僕が中強度のトレーニングを選ぶ理由

僕が中強度を選ぶ理由は三つある。第一に、介入後にすぐ作業へ移れることを最優先にしたいこと。第二に、翌日に過度の筋肉痛を残さないようにしたいこと。第三に、再現性の高い儀式として固定化できるようにしたいこと。

この三つを満たすために、スクワットのセットは少数に絞る。五回を三から五セットで終えるのは、主観的強度が上がり過ぎない範囲に収めるためである。最後の二回がややきつい程度で止めると、交感と副交感の切り替えがスムーズになる体感がある。

夜の景色が変わる

この習慣を挟むと、夜にもう一仕事できるだけの意欲が戻ることが多い。音楽や読書にも再び気持ちが向く。すべてが劇的に変わるわけではないが、止まっていた歯車がカチリと噛み合う感覚が戻る。成功率は毎回同じではないが、期待できる確率で効く。

緊張感の高い毎日は、気づかないうちに達成と消耗を同時に積み上げている。休日に心が乾いてしまうなら、体から心へ逆流させる工夫が要る。 僕にとっての引き金はスクワットだった。重さは翌日に響きすぎない程度で良い。迷ったら五分だけやってみる。小さな動きが戻ってくるはずだ。 動いた体が、心に遅れて合図を送る。

その往復がまた前を向くためのエネルギーを与えてくれるのだ。